冷たい朝 (フィクション)

 

享年24歳 ある冬の冷たい朝 彼女は眠るように死んでいました お気に入りのタバコと真っ赤なヒールと たくさんのブランド物のバッグや服に埋もれて 眠るように死んでいました 綺麗に化粧した顔はいまにもにっこり笑い出しそうで いつもつけている真っ赤な口紅もつやつやしていました 何一つ欠けていないように見えました ただ一つ彼女の命だけが欠けていました 広くてふかふかのダブルベットで ベッドサイドには読みさしの本が伏せてあり たったさっきまで いきていた ようでした 

 

そして 誰も彼女の名前を思い出せませんでした

 

 

おやすみなさい