前の家の話

思えば、あの部屋が好きだった 1K四万三千円Wi-Fiオール電化築15?20?忘れちゃったけど、そんなかんじの。 あの狭くてものであふれている、わたしの城 わたしだけの城 今思えばあの部屋を愛していた 初めて一人暮らしした部屋 換気扇がありえないほど弱くてタバコを吸うときに全く役立たなかった お湯の温度調節ができなくて赤と青の蛇口をうまい具合に捻らなきゃならなかった どっちをどのくらいずつひねれば最高の温度になるか、引っ越すときにはもう完璧にわかっていた ボロいエアコン 湿気がひどい部屋で、除湿機を永遠にかけていた 二階の角部屋 狭くておまけみたいなベランダ 夏に出窓に腰掛けてお酒飲んだりしたな 

 

実家は居心地が悪くて1人になれなくて毎日シャワーを浴びながら静かに泣いている

飯を食ってても酒を飲んでても大声で歌ってても寒い中1人で歩いてても電車に長い時間揺られていても、どこか自分じゃないような気がする どこか他人事のような気がして ああ、きっと死んでしまうときはこんななのかな、とか思ったりする 全てに現実味がない

 

タバコを吸いに外に出てぼそぼそした雪がべしゃべしゃの地面に吸い込まれるのを見ていると叫び出したくなる はやくここを出なきゃ 何かを始めなきゃ 新しい城を見つけてはたらかなくちゃ クソつまんねえな お金を稼いで働いて 生きてると思いたい 生きるために いつか死ぬために